小川洋子さんのことは、この小説で知りました
自分は基本小説を選ぶ時は、表紙と裏表紙のあらすじ、帯のコメント、目次をみて、本文にさらっと目を通して面白そうなものにしています
もし買った本が面白くなかったら嫌でしたので
こちらの小説は元々人気なようで、目立つところに置いてありました。第1回本屋大賞受賞作品だそうです
実際にこの小説を読んでみて、どうして本屋さんがオススメしているのか分かりました
今回はこの小説の内容や、この本を読んでみての感想を書いていきたいと思います
冒頭
登場人物は私(母)と息子(ルートのように賢そうな頭だからと博士からルートと呼ばれる)、そして2人に博士と呼ばれる老人です
博士は交通事故の後遺症により、昔の記憶は残っているのですが、新しく記憶することができません
そして新しい記憶は80分しか持ちません
ひとり暮らしの博士の所に私は家政婦として働きに行き、その後「子どもを1人にしてはいけない」という博士の一言から、学校の帰りにルートもそこに行くようになります
博士は数学を愛しており、私とルートは博士から数学や数式の素晴らしさを教えてもらうことになりました
印象的な場面
私とルートと博士で、野球の観戦に行った話
ルートと博士は共にタイガースのファンなのですが、1度も球場に観に行ったことはありませんでした
そこで私は球場のチケットを購入し、3人で観戦に行こうと考えました
試合は勝利に終わり、3人とも満足して帰路についたのですが、久々の外出で疲れてしまったのか博士が熱を出してしまいました
私は泊まりがけで博士の看病をして、翌日のお昼頃にようやく博士は目覚めました
私は博士に「昨日3時間も野球を観戦したから疲れが出たんですよ」等々話しかけるも、博士は顔を背けます
そこで私は初歩的なミスに気づきます
そして博士の方から、すすり泣く声が聞こえてきます
“僕の記憶は80分しかもたない“と書いてあるメモ用紙を読みながら、静かに泣いている博士を、私は初めて目にしました
私は気づきました。初歩的なミスではなく、致命的なミスを犯してしまったのだと
博士のもとを1度クビになる
泊まりがけの看病の件を家政婦組合に届け出なかったことにより、博士の義姉からクレームが入り、私は博士の所をクビになりました
しかし別のお宅で仕事をしていると、組合から電話が入り、博士の家に向かうことになります
そこには博士と博士の義姉、そしてルートがいました
博士の義姉は、私が子どもを博士のもとに送り込んでいると思い込み、何か意図や企みでもあるのかと疑いをかけています
「ルートは友人の家に遊びに来ただけだ」と私は言いますが、義姉は博士の所に友人が来たことは1度もないと言います
私は「それでは、私とルートが博士の最初の友だちです」と言うと、博士が突然「子どもをいじめてはいかん」と言いました
メモ用紙に何かを書き、博士はその場を離れます
メモ用紙には、1つの数式が書いてありました
eiπ+1=0
感想
印象的な場面から感想を書いていきたいと思います
私とルートと博士で、野球の観戦に行った話
楽しかったであろう記憶を、自分は失くしてしまっているのだと気づいた時、私はどう思うのでしょう
たとえ博士のように毅然とした人物だとしても突如として突きつけられる事実に、悲しみ、うちひしがれるだろうと思います
ましては記憶は80分しかもたないことを、過去の自分から知るということは、どれほど悲しいものなのでしょうか
博士のもとを1度クビになる話
eiπ+1=0
とは、いったい何なのか
この数式は実際にあるものですが、この数式に至る過程はあっても、意味は調べても出てきません
なんとなく考えられるのは、eiπは博士と私とルート、1は義姉なのかなと思いました
そして0は1でも-1でもない
しかし揺るぎない数字、保たれた均衡、自然に存在しているもの
プラスもマイナスも、掛けても0。eiπ+1=0という数式は、この状態は自然なものであり、心地の良い状態であるといった意味なのかなと思いました
それでは読んでいただき、ありがとうございました
コメント
≪…eiπ+1=0…≫の風景は、白鳥の里に飛来・・・
㋿年5月21日~6月5日
射水市大島絵本館