この本を読む前、自分は仕事が多忙で、なんとなしに仕事辞めたいなと思っていました
そんな時に目に付いたのがこの本でした。“ちょっと今から仕事やめてくる”
そんな簡単に辞められたら苦労はしないけれど
そんなことを思いながらこの本を購入しました
これが、とても面白かった
今回は、北川恵海さんの“ちょっと今から仕事やめてくる”の冒頭と印象的な場面、感想を書いていきたいと思います
冒頭
主人公は新卒のサラリーマン男性
この男性の勤めている所が、まあ近年でいうところのブラック企業
サービス残業はもちろん、休日出勤は当たり前
家は寝るだけの場所と化しており、働き詰めで体調も最悪といった状態です
働き通しでまともに休めず、身体も精神も悲鳴をあげますが、主人公はがむしゃらに働きます
そんな日常のなか、主人公は無意識に駅の線路に飛び込もうとします
そして、突如として主人公を助けたのが、自称同級生「ヤマモト」です
その後、主人公とヤマモトは度々会うようになります
と、冒頭はこのような感じです
労働基準法完全に無視な会社ですね
自分はここまで劣悪な職場ではなかったのですが、主人公に感情移入してしまいました
読んでいくにつれて少しきつかったですが、そのぶん引き込まれもしました
印象的な場面
その後も、過重な労働をおこなう主人公ですが、ヤマモトと会い、酒を飲んだり仕事の話をしている場面では、明るい様子がみられます
しかし、小説が進むにつれ、ヤマモトは同級生のヤマモトではなかったこと、そして再度教えてもらった名前の“ヤマモト”はすでに亡くなっていることが分かります
そしてそんな中、職場でも不穏な空気が漂い、信頼していた先輩に裏切られ、貶められます
心身ともに主人公は疲れ果て、何を信じれば良いのか、社会での自分の存在意義や生きる意味はないのではないかと絶望し、
明日から憂鬱になる日曜日、いつも閉まっている会社の屋上の南京錠を壊し、屋上の手すりを乗り越え、ふちに立ちます
身を投げようとした時、後ろからヤマモトの声が聞こえました
ヤマモトは主人公に、自分を幽霊だと思っているのか、触れてみれば分かるだろうと、暗に主人公を引き留めます
そしてヤマモトは、“人生は誰のためにあると思うか”主人公に問いかけます
主人公は、社会のためか自分のためか、それとも将来の子のためかと答えますが、それが全部ではないと言われます
半分は自分のためであり、もう半分はじぶんを大切に思ってくれている人のためにあるんだとヤマモトはいいます
と、このような流れで物語が進みます
“じぶんを大切に思ってくれている人”それは、じぶんを産んで育ててくれた親のことです
そう言われるまで、主人公は親が悲しむだろうということに気が付きもしなかったのです
しかし、案外言われなければ、いつのまにか忘れてしまうものだと思います
学校でのいじめを苦に、過重労働の果てに、自ら死を選ぶ子どもや大人。ニュースではそんな話にあふれています。とても悲しいことです
そして、その子の親が悲しんでいるところもまた、ニュースでよく見ます
自分のために頑張れなくなったら、自分を心配してくれている親のために、そこから逃げてもいいのだと、この本は教えてくれているように感じます
感想
最後に感想ですが、
小説のタイトルと同じように、仕事を辞めたいと思ったときに読むと良いなと感じたことと、
ブラック企業に勤めてらっしゃる方が読んだら、感情移入しすぎてつらくなるのではないかなと思います
感情を揺さぶられるという意味では、特にオススメです
しかし、この本を読んで、つらいきついと感じるのであれば、今の職場を振り返ってみても良いかもしれません
振り返られるときに振り返っておかないと、主人公のように最後の1歩まで追い詰められてしまっていたら、そんな時に正常な判断はできません
主人公はヤマモトに会って幸運だったなと思います
そして、この小説は映画化にもなっています
自分は映画も見たのですが、あらかた小説と同じ内容で、同じようにみてて胸が苦しくなるほど揺さぶられました
なので、映画もオススメです
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